いろはにほへと「自愛」
ホンマタカシ×岩井志麻子
からだが求める「気持ちよさ」を大切に、そして美しくあるために。女性の視点でつくられたセルフプレジャー・アイテム『iroha(イロハ)』をモチーフに写真家と文筆家がそれぞれの感性で描写します。
「自愛」
あるスポーツ新聞の記者に、こんな話を聞いた。
「うちの新聞には、街頭で若い女の子にエロなアンケートを取る、っていう企画というか連載コーナーがありまして、そこで学んだんですが。『君、マスターベーションする?』って単刀直入に聞くと、ほとんどの子が『しませんっ』ときっぱり否定するんです。ところがあるとき、ふと『マスターベーションは週に何回くらいしているの』みたいに、『している』のを前提に聞いてみたら。ほぼすべての子が、『3回くらいかな〜』、『実は毎日してます』と、素直に正直に答えてくれました。以来、質問の仕方を変えました。たとえば仕事でなくても気になる子に、『彼氏いる?いない?』ではなく、いきなり『彼氏は何をしてる人?』と、いるのを前提に聞いた方が、いるにしてもいないにしても、ごまかさずはっきり答えやすいんですよ」 その時は、なるほどな〜とけっこう感心したのだけれど。今の私は、まずは彼の頭上にirohaを掲げ、偉そうにしてやりたい。
「あんた、これを女の子に見せて、もう一度『君、マスターベーションする?』って聞いてみな。どんな気取った子も嘘つき女も、『しますっ』と飛びついてくるよ」そして、「マスターベーションなんてしない」という大嘘つき女にもまた、irohaを鼻先に突きつけて説教してやりたい。
「和菓子かと思った。可愛いから飾っておきたい。だから欲しい」くらいの嘘は、この際だから許してやるとして(まるでマスターベーション神の使いのような私)。自慰は自愛。自悦でも自喜でもいいんだけど。何にしても、自分を喜ばせることをなぜ恥ずかしがるの。毎日気持ちいいことがあれば、自分にも他人にも優しくできるよ。