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「性愛」ってなんだろう? 3人のイラストレーターが自由に軽やかに描く

 

「性愛」について、みなさんどんなイメージを持っていますか? 温かい、楽しい、欲望、怖い、ドロドロ……。そこには、「性愛」という言葉の持つ意味を超えた、人それぞれの体験や考えに基づいた色やかたちがあると思います。

 

今回は3人のイラストレーターに、「性愛」をテーマにひとつのイラスト作品とそこに込めた想いを寄稿していただきました。彼女たちの思索と、そこから生まれたイラストによって、みなさんのなかにある「性愛」を、自由に軽やかにとらえられるきっかけになれば嬉しいです。

 

大島智子「わたしのやり方」

 

「性愛」とはなんだろう? 辞書で引いてみても「そりゃそうだけど」と思ってしまいます。既にある言葉やAVや漫画などからの影響が大きすぎて、一体自分にとってはなんなのかを考えるのが難しい。

 

「性愛」と聞いて思い浮かぶ好きな作品のことを考えてみます。岡崎京子さんの短編漫画『SIX SEX SIXTEEN』、Hi-Posiさんの楽曲『最高の前戯』が思い浮かびました。どちらの作品も、世の中に溢れるセックスのマニュアルや思い込みから離れて、今いる自分や相手と対峙しましょうといった、優しいメッセージを感じます。あと、喜多川歌麿さんの、にこにこした男女の春画も好きです。こちらもお互いを思いやった温かさを感じるからでしょうか。

 

私はセクシャルなシーンのイラストを自然と描くことがありましたが、心ここにあらずな表情で、淡白な印象のものが多いなと、振り返ってみて思います。それはそれで愛しく、必要な時間だったと思います。こうして考えてみると、私にとっての性愛とは、エロチックで刺激的なものではなく、自分と向き合い、相手と向き合うという、生活の一部のようでもあるし、社会規範では到達できないコミュニケーションのようなものかもしれません。(大島智子)

 

maegamimami「生活」

10代20代の頃は、絵に描いたようにドギマギする淫らなイメージを持っていた「性愛」という言葉も、年を重ね人間力が育まれてゆく毎に、“淫ら”さというイメージは消え失せて、ごく自然な本能的な欲の一部だと考えるようになってきました。

 

好意を抱いた相手との距離がグッと近くなり、親密さが生まれはじめたならば、次はその人の肌に直接触れてみたいと感じるようになる。

 

より深く相手のエネルギーをキャッチしたくなるからこそ、顔に触れたり抱きしめたりしたくなって、受け入れ、受け入れてもらう歓びを欲するようになる。何て動物的で可愛らしく憎めない欲求だろうか! と思うのです。恥じる理由なんて一ミクロンもない。

 

信頼関係が成立した相手と、目を合わせて話をしたり、おいしい食べ物を味わったり、この二人でしか出来ないことを無限に試して発見してゆく。相手との愉しさを増やすことが出来る、あたたかな行為の一部であるべきです。

 

何にせよ十人十色の私たちですから、それぞれの受け止め方と向き合い方があるべきで、正解なんてものは存在しなく。より豊かに生活するうえで満たすべき欲はたくさんあるけれど、一人じゃ成立しないってところがこれまた愛おしい。そんなふうに思います。(maegamimami)

 

中村桃子「自分を知ること」

性愛とは自分を知ることのひとつだと思う。

 

性愛についてインターネットで調べると、「本能に基づく性的な愛情、愛着や愛欲、肉体的接触」と説明されていた。

 

そこには相手がいて、の感情や、行動のように感じるけれど、それと向き合い、楽しむためには、まずは自分自身を知ることに繋がるとおもう。

 

自分の扉を自分でノックしてみてほしい気持ちを込めて、自らの舌の上を冒険してる1人の女の子のイラストを描きました。

 

私は、まだまだ知らないことだらけの未熟ながらにも、母の両足のあいだから鳴きながらこの世に出てきた記憶にないときから、集団社会(大人になってから考えればそれは小さな社会だけど)や、集団の中の個人について考えくだらなく悩んだりもした大切な学生時代、そして社会人10年目の今の私、年を重ねるごとに少しづつ経験も増え、自分のことも知った。とおもったら、また知らない自分に変化してたりもする。

 

それが楽しい。性や愛について、インターネット上に自分が具合的にしゃべれることはないけれど(ことばはあくまで摂取する側)、友人や家族や特定の誰かとはそれを共有できる、していきたい。そんな曖昧さも込めて、絵を描きました。絵は曖昧で解釈がいろいろあって、それぞれ真実で、そこがすき。性愛も似てるかもしれない。(中村桃子)

 

プロフィール

大島智子
イラストレーター。2010年からイラストを元にしたGIFアニメをTumblr上に公開し始める。それらを作品化した『ガストでもロイホでもラブホでもいいよ』が第17回学生CGコンテストの最終ノミネートに残る。2017年より音楽 / アートレーベル術ノ穴 に加入。現在はCDジャケットやMV制作も行う。2017年に作品集『Less than A4』(DLEパブリッシング)、2018年には漫画『セッちゃん』(小学館)を発表。主な個展に『パルコでもロイホでもラブホでもいいよ』(GALLERY X BY PARCO / 渋谷)など。
Instagram:@tmsowacl

 

maegamimami
イラストレーター。連続ドラマ『カルテット』のポスタービジュアルのイラストデザイン及び、主題歌『おとなの掟』のジャケットや、橋本治の連載小説『黄金夜界』(読売新聞)の挿絵などを手がける。そのほかに、BEAUTY&YOUTH ユナイテッドアローズとのコラボレーションコレクション、POLA「ディエム クルール」、Wacoal「ラゼ」、日本人で初めてパッケージデザインを務めた「ハーゲンダッツ」など。
Twitter:@maegami_mami
Instagram:@maegamimami

 

中村桃子
イラストレーター / アーティスト。1991年、東京生まれ。グラフィックデザイン事務所を経て、現在の活動に至る。スタイリッシュでエモーショナルな女性と、生き物のような特徴的な花をポップな世界観で描く。装画、雑誌、音楽、アパレルブランドのテキスタイルなどを担当するほか、2019年には作品集『HEAVEN』(ブートレグ)を発表。最近の個展に『She saw』(大阪)など。
Twitter:@nakamuramomoko_
Instagram:@nakamuramomoko_ill

 

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