骨盤底筋とは? 健康のカギは骨盤底筋トレーニングにアリ
女性の皆さんは「膣のゆるみ」を意識したことはありますか?
セックス経験のある女性なら、一度は「自分の膣の締りってどうなんだろう」と考えたことがあるかもしれません。
ただ、膣の締りはセックスのためだけにあらず。女性の日常が快適かどうかは、膣の締り=骨盤底筋の筋力に大きく左右されています。
注)「ちつ」の解剖学的に正しい表記は「腟」ですが、この記事では一般的な表記である「膣」を使用します。
膣がゆるむとは? 骨盤底筋との関係
膣がゆるむ原因は主に二つあります。
- 膣を支えている骨盤底筋や、その周辺組織がゆるむ
- 膣の粘膜自体が薄くなりゆるむ
2は閉経後の女性ホルモンの低下によって顕著に現れ、根本解決にはホルモン補充や膣ハイフなど、医療機関での処置が必要です。
今回は、自宅でも対策ができる1の原因と対策方法について解説していきます。
骨盤底筋とは
骨盤底筋(こつばんていきん)とは、骨盤の底部に存在するハンモック状の筋肉群の総称です。
骨盤底筋は排泄の制御や、尿道・膀胱・子宮・直腸といった臓器を下から支える重要な役割を果たしています。
骨盤底筋は膣を取り囲む形で存在しているので、「骨盤底筋の筋力低下=膣がゆるむ」という関係になるのです。
男女で異なる骨盤底筋事情
実はこの骨盤底筋は、3つの理由で女性の方が不安定だといわれています。
- 女性の方が穴が多い(膣と尿道)
- そもそもの筋力が女性の方が弱い
- 妊娠と出産時にダメージを受ける
何も対策しなければ、女性の膣(骨盤底筋)がゆるむのは自然なことなのです。
膣がゆるむデメリット・トラブル
では次に、膣(骨盤底筋)がゆるむと生じるデメリットとトラブルを紹介します。
膣(骨盤底筋)がゆるんでいる人は、骨盤底筋が硬くなって動かせない場合も多いので、その場合のトラブルも併せて紹介します。
- 失禁
- 骨盤臓器脱
- 血行不良、冷え
- 生理痛の増加
- 膣の潤滑不足による不快感・性交痛
- セックスの満足度の低下
- オーガズムが弱くなる・得づらくなる
- 下腹が出る
- 膣ナラ、お風呂でのお湯漏れ
- 出産時の会陰裂傷
①失禁
膣(骨盤底筋)がゆるむと尿道を締められなくなり、笑ったり荷物を持ってお腹に力が入った際の、失禁(腹圧性尿失禁)に繋がります。
またヒトの体には、骨盤底筋が収縮すると膀胱が弛緩する「会陰排尿筋抑制反射」という仕組みがあり、これによって膀胱の緊張を逃がしています。
しかし、骨盤底筋が動かせないと膀胱の過緊張に繋がり、これも失禁の原因となります。
女性は男性よりも尿道が短いため、特に注意が必要なのです。
②骨盤臓器脱
画像出典元:おとなセイシル「骨盤底筋とは 尿もれ・臓器脱予防にゆるませるべからず」
膣(骨盤底筋)がゆるむと、骨盤内の臓器を支えられなくなり、膣から子宮や膀胱などが飛び出る「骨盤臓器脱」が生じます。
③血行不良、冷え
膣(骨盤底筋)のゆるみは、骨盤底筋の筋力不足が原因です。筋肉が不足すると骨盤内の血行が悪化し、冷えにつながります。
④生理痛の増加
骨盤内の血行不良により、周辺臓器が冷えます。これは生理痛の増加につながる場合もあります。
⑤膣の潤滑不足による不快感・性交痛
骨盤内の血行不良は、膣の潤滑不足にも繋がります。血行が悪ければ当然その周囲には水分が行き渡らず、乾いてしまうからです。
膣の潤滑が不足すると、日常生活でかゆみや乾燥感を覚えたり、性交痛に繋がります。
また膣(骨盤底筋)が硬くなった場合も、性交痛や挿入障害に繋がります。
⑥セックスの満足度の低下
膣がゆるむことで「相手が気持ち良くないのでは? 」と不安になることもあります。
実際に出産後のセックスで、パートナーから「ゆるくなった」といわれたことがあるという話はよく聞きます。
しかし、パートナーにとって膣がきつい状態が必ずしも良いとは限らないので、ここは相手の感想を聞けると良いでしょう。
⑦オーガズムが弱くなる・得づらくなる
オーガズムの時、膣の周辺がビクビクする感覚があると思いますが、実はあれば骨盤底筋がビクビクと収縮しているいます。
骨盤底筋の筋力が低下したり硬くなると収縮が弱くなり、オーガズムが弱くなる/得づらくなる可能性があります。
⑧下腹が出る
骨盤底筋は内臓を支えているので、骨盤底筋が弱ると内臓の位置が下がり、下腹がポッコリ出ることにつながります。
⑨膣ナラ、お風呂でのお湯漏れ
膣(骨盤底筋)がゆるむと、膣の入口が開くようになり、空気や水が入りやすくなります。
おならのように腟から空気が出て(膣ナラ)恥ずかしい経験があるひともいるのではないでしょうか。
また、お風呂で膣にお湯が入って、上がった後に漏れてしまうことにもつながります。
⑩出産時の会陰裂傷
膣(骨盤底筋)を動かせない=硬い状態だと、出産時の広がりに耐え切れず、膣の周り(会陰)が切れてしまうことにもつながります。
会陰が切れると痛いだけでなく、出産後の回復も遅れます。
膣を引き締める 骨盤底筋を鍛えた際のメリット
膣(骨盤底筋)が引き締まったり、筋力が向上してうまく動かせると様々なメリットが得られます。基本は上で紹介したデメリットやトラブルの裏返しです。
- 失禁の改善
- 骨盤臓器脱の予防
- 血行、冷えの改善
- 生理痛の軽減
- 経血のコントロール
- 膣の潤滑性の向上、性交痛改善
- セックスの満足度向上
- オーガズムを得やすくなる・快感の増加
- 下腹がへこむ
- 姿勢の改善
- 膣ナラ、お湯漏れの改善
①失禁の改善
尿道の閉鎖圧が上がり、失禁の改善や予防につながります。
失禁の不安が無くなると、単に不快感が減るだけでなく、スポーツや映画鑑賞なども気兼ねなく楽しめるようになり、活動的な生活にもつながります。
②骨盤臓器脱の予防
臓器を支える力が向上し、臓器脱の予防に繋がります。
ただ、一定以上飛び出ている場合は効果は薄いので、気になる方は医療機関に相談しましょう。
③血行、冷えの改善
骨盤底筋の筋力が向上すると、血流が増加し、冷えの改善に繋がります。
④生理痛の軽減
子宮周りの血流増加、体温向上により、筋肉の緊張がやわらぎ、生理痛が軽減する可能性があります。
また、生理痛を引き起こしている物質(プロスタグランジン)が、血流改善によって押し流されることも、痛みの軽減に関与している可能性があります。
⑤経血のコントロール
骨盤底筋を上手く締めらて、経血を一定量留めることができる人もいます。
ある程度溜めたら、トイレで一気に出す感じです。
これができると、生理中の不快感の低減や、ナプキンの節約にも繋がります。
⑥膣の潤滑性の向上、性交痛改善
血流が改善すると、粘膜に水分が行き渡り、膣の潤滑性が向上します。
膣の潤滑性向上は、乾燥や不快感対策、性交痛の対策になります。
⑦セックスの満足度向上
膣の締りが良くなると、自信を持ってセックスに臨むことができ、満足度の向上につながります。
男性がどの程度の「締り」を求めているかは人それぞれですが、筆者の経験上、締りの良さに自信がある女性は、ほぼ全員セックスの満足度が高い印象を受けました。
⑧オーガズムを得やすくなる・快感の増加
オーガズムは骨盤底筋の運動なので、骨盤底筋がしなやかで筋力十分だと、オーガズムが得やすく、またその際の快感も高くなると考えられます。
⑨下腹がへこむ
臓器の位置が上がり、下腹がへこみます。
この効果はまだあまり検証されていませんが、「下腹がへこんだ!」という声はトレーニング実践者から多く聞かれます。
⑩姿勢の改善
骨盤底筋は体幹の筋肉なので、筋力向上により体が安定し、姿勢の改善も期待できます。
⑪膣ナラ、お湯漏れの改善
膣の入口が閉じることで、空気や水が入りづらくなります。
膣ケアには骨盤底筋トレーニングと膣マッサージ
女性において、膣と骨盤底筋を健やかに保つメリットを紹介しました。
膣と骨盤底筋をケアするには、骨盤底筋トレーニングと膣マッサージが重要です。
以下のコラムでやり方を紹介するので、気になる方はチェックしましょう。