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女性の生き方や欲を肯定する存在でありたい。私たちがirohaをつくる理由(広報チーム編)

 

2013年に初代「iroha」が誕生してから、私たちは絶えず、女性が求める「心地よさ」や、当たり前の欲求と向き合ってきました。そしていま、女性たちの声は、少しずつ、けれど確かに社会へ届き始めています。

 

パートナーがいてもいなくても、セックスをしてもしなくても、心地よく生きられる世界へ。「iroha」というブランドを通じて、私たちはそんな世界を目指しています。

 

開発者が想いを語った前回のインタビューに続き、今回は、「iroha」を世に広めるべく奔走する広報チームに話を聞きました。メディアやユーザーのみなさんと接する機会も多い広報チームから見て、女性を取り巻く環境は、どのように変化しているのでしょうか? ぜひ、じっくりとおつき合いください。

 

 

西野
2017年2月入社。イベントやメディアなどに登壇する機会も多い、広報チームのリーダー的存在。

 

本井
新聞記者を経て、2019年1月に入社。ひとつのテーマを掘り下げて社会問題に取り組みたいという想いで入社したとか。

 

犬飼
PR会社でのライター・営業を経て、2019年5月に入社。「もっと性のPRを掘り下げたい」という思いから、転職を決めたそう。

 

性にまつわる情報を伝えるのは難しい。その根本にある問題は?

――そもそも、広報のお仕事とはどのようなものなのですか?

 

西野:会社と世の中のコミュニケーションを司り、ユーザー、メディア、取引先との関係を構築していく仕事です。メディアの編集部に足を運んで、女性の性問題や「iroha」の魅力を伝えることもありますし、イベントを開き、メディアやユーザーのみなさんを招待することもあります。

 

仕事の根本にあるのは、性にまつわる情報を伝える難しさを理解したうえで、「世の中に広めるための見せ方や言葉」を考えること。広報みずからメディアに登場する仕事も多いですが、それはほんの一部。ほとんどが地道な仕事の積み重ねなんですよ。

 

犬飼:そうですね。私も入社前は「イケイケドンドンなノリの社員が多いんじゃないか」と震えていましたが(笑)、入社してみると、泥臭い仕事をコツコツできるマジメな人ばかり。いい意味で印象が大きく変わりました。

 

 

――「iroha」をアピールするうえで、広報チームのポリシーはありますか?

 

西野:会社のビジョンは「性を表通りに、誰もが楽しめるものに変えていく」なのですが、これは「みんなセルフプレジャーをするべき」という話ではありません。「セルフプレジャーは、してもしなくてもいいこと」という大前提が伝わるように気をつけています。

 

――むやみにセルフプレジャーを推奨するのではなくて、あくまで「してもいい」選択肢を増やすということですね。

 

西野:性についての話題は、やっぱり誤解されてしまうことも多いんです。その理由は、「性にまつわる共通のリテラシー」を持ちにくいからではないでしょうか。たとえば、メイクは「どのアイテムをどの順番で使うか」という共通のリテラシーがある程度あったうえで、それぞれが「自分のメイク」の話をしている。また、女性のメイクに関してはタブー意識もほとんどないですよね。情報が豊富にありますし、自分で情報を得ることへの心理的なハードルもありません。

 

でも性に関しては、タブー意識や性欲の度合い、経験が人それぞれなので、そもそも共通のリテラシーを持ちにくいもの。それなのに、個人の性が社会全体の共通リテラシーのように語られてしまう傾向があるように思います。「男はみんな狼だから」といった個人の経験論を、そのまま一般論のように語ってしまいがちなんですよね。

 

――個人差が見えづらく、「一般的にはこう」という境界線が導き出しづらい話題かもしれません。

 

西野:そうですね。個人間のズレをすり合わせながら商品をPRしなければいけないのが、「iroha」特有の難しさだと思います。

 

もちろん、性をネガティブに捉えている方も少なからずいます。もしかしたらそれは、嫌な原体験があるからかもしれない。ですから、相手のバックボーンを考慮せず、一概に「ポジティブに捉えていいんだよ」と言うことはできません。その人の価値観や、本心ではどんなコミュニケーションを欲しているのかを考えて、伝え方を見つける必要があります。

 

本井:個人の経験と一般論を混同してしまうがゆえに、性について語ると「エロい女」のレッテルを貼られたり、偏見の目で見られたりすることが、まだあるのではないでしょうか。性の話をするときに、誰もがストレスを感じないような社会の土台づくりが必要だと思います。

 

 

 

ただ買い物するだけじゃない。リアル店舗が「悩みを話せる」場所に

――2019年は、大丸梅田店に「iroha」の常設店ができたことも大きな話題となりましたね。

 

本井:女性のセルフケアとして、生理用品やランジェリー、漢方のお店と並び、「iroha」の店舗を置かせてもらえたことは、大きな一歩だと思います。これまでは、アダルトグッズを「エロ」の文脈で取り扱われることが多かった。でも、私たちが本当に発信したかったのは「セルフケアの一環で使うもの」という考え方。それがやっと伝わり始めたと感じました。

 

――どんな経緯で百貨店に出店することになったのですか?

 

犬飼:大丸のバイヤーさんからお声がけをいただき、企画が始まりました。「これからは、女性の深層的なものに寄り添っていくことが大切だ」ということで、「iroha」に着目していただいたんです。

 

西野:お話をいただいてから、前身であるポップアップストアを出店するまで、足掛け2年。バイヤーの方と二人三脚で試行錯誤しながら店舗をつくりあげ、好評を得たことが、いまの常設店につながっています。アイテムを手に取った若い女性が、コスメのように「これカワイイ!」「こっちのほうが好き!」とはしゃぐ光景を見たのは初めてで、感激しました! 「この風景を見てみたかったんだ」と、心底思いました。

 

――お客さんからのリアクションはいかがでしたか?

 

本井:常設店は、大丸の「michi kake」というフロアにあり、「女性の身体のリズムに寄り添う」お店が集まっているからか、気軽にご来店いただいています。以前のポップアップストアのときは、和菓子店と間違えて入ってくる方もいらっしゃいました(笑)。

 

 

本井:夫婦のセックスレスや性欲に対する不安など、個人的な悩みを吐露されるお客さまもいらっしゃったそうです。「自分の性欲を認めていいんだ」ということがわかり、涙を流す方もいたのだとか……。店舗が買い物を楽しむ空間である以上に「人に言えなかったことが言える場」になっているのだなと気づきました。

 

 

潮流が変わったのはこの2年。女性が自分の性を意識し始めている

――「iroha」はあえて「マスターベーション」ではなく「セルフプレジャー」という表現で女性の性欲を肯定しています。この「セルフプレジャー」という表現は、どのくらい日本女性に広まっていると思いますか?

 

西野:数年前と比べて、かなり浸透してきたと思います。女性誌『Oggi』の2018年3月号では「これからはセルフプレジャー上手な女になろう」という特集が組まれ、「iroha」を紹介してくださいました。

 

私が入社した2017年ごろは「女性向けセルフプレジャーアイテム」という存在がまだ浸透しておらず、「iroha」を「女性用TENGA」と言われることもありました。取り扱っていただけるメディアもセクシャルなテーマに特化したメディアやスポーツ紙が多かったので、女性誌に取り上げられたことが嬉しいです。

 

犬飼:私が入社したのは2019年5月ですが、仕事のなかで否定的な反応を受けたことはほぼありませんね。この2年ほどで少しずつ、真摯に受けとめてくれる土壌ができつつあると感じています。

 

 

――潮流が変わったきっかけはなんだと思いますか?

 

本井:2017年にハリウッドから広がった#MeToo運動が契機だったのかなと思います。直接のきっかけというわけではないと思いますが、日本女性が、自身の性に意識を向けるようになり始めたのではないでしょうか。

 

犬飼:SNSが普及したことで、自分の意見を発信するだけでなく、ほかの誰かの意識も知れるようになったので、「私だけじゃないんだ」という感覚が広まってきているのかもしれませんね。

 

 

「それでいいの?」自分に問いかけ、自分で選ぶことが心地よい世界につながる

――これからの時代、女性がさらに心地よく生きていくために、何が必要だと思いますか?

 

西野:個人的には、何をしたくて、何を心地よく感じるのかを、つねに自分自身に問いかけることだと思います。みんなそれぞれ自分に合った幸せのかたちがあるはずで、たとえば結婚して子どもを産んで専業主婦になる……といった、ひと昔前の社会で言われていた「女性の幸せの正解」が、自分にとっての幸せとは限らない。なのに、その亡霊に惑わされる女性はまだ多いですよね。

 

選択肢が多い時代に変わりつつあるいま、「本当にそれでいいんだっけ?」と自分自身に問いかける、パーソナルな視点が大切なのではないでしょうか。

 

犬飼:そうですね。何かを選んだときも、その選んだ理由を自分の言葉で語れることが大事だと思います。正直、周りの意見や風潮に流されてしまったほうがラクなときもある。けれど「その選択は自分にとって正しいの?」を問いかけて、自分なりの回答を見つけることで、本当に大切にしたいことが見えてくると思いますよ。

 

 

本井:世間の常識とかしきたりにとらわれず、自分の欲求に素直に従ってみることは大切ですよね。私は最近タヒチアンダンスを始めたんですが、お腹を出す衣装を着るのが不安で、始めるかどうか2年も迷っていました(笑)。

 

でも、最終的に優先したのは、自分自身の好奇心。しかも、実際に始めてみると、私の体型を気にしている人なんていませんでした。周りがどう思うかより「自分が楽しい、嬉しい」というプラスの気持ちに目を向けるべきだと思います。

 

 

それぞれの価値観を尊重しながら、女性が脅かされない環境へ

——みなさんは、「iroha」を通じてどんな世界を実現したいですか?

 

犬飼:セルフプレジャーやセックスというのは、「したい人はしていいし、したくない人はしなくていい」もの。それに、「したい人」が後ろめたさを感じる世の中にはなってほしくないなと思います。みんなそれぞれの価値観があるなかで、自分とは違う意見を持つ人と足を引っ張り合うのではなく、自由に選択できる環境を整えていきたいです。

 

本井:私も、性を語りたい人が語ったときに、他者から脅かされない社会にしていきたいです。新聞記者時代にもその難しさを痛感しましたが、とても大切な問題だと思いました。もっといろんな人が「普通に話せる」環境のために、「iroha」の広報活動を通じて土壌づくりをしていきたいですね。

 

西野:女性とひとくちに言ってもいろんな人がいます。けれど、「女性である」からこその不利な状況や、「こうあるべきだ」という息苦しい固定観念は、共通してあるのではないでしょうか。それらをなんとかするためには、「iroha」を通じて「そもそも、なんでダメなんだろうね?」ということに気づいてもらいたい。女性の心地よさに寄り添う商品があるということを、これからも伝えていけたらと思います。

 

 

メディアやユーザーのみなさんのリアルな声を耳にする立場だからこそ、「すべての女性が心地よく生きられる世界」を実現する難しさも痛感している広報チーム。

 

「iroha」の挑戦はまだまだ始まったばかりですが、ブランドやアイテムを通じて、これからも女性たちへ向けたメッセージを発信し続けていきたいと考えています。

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