女性の悩みに寄り添うために。私たちがirohaを販売する理由(iroha STOREスタッフ編)
ブランドの誕生以来、私たちは「セルフプレジャーはセルフケアの一環である」ということを伝え続けてきました。その思いが社会に届いたと感じた象徴的な出来事が、2019年の初の常設店「iroha STORE 大丸梅田店」オープンです。大丸梅田店5F、女性のリズムに寄り添うゾーン「michi kake」に、ランジェリー店や生理用品店と並んで店舗を構えています。
今回はそんなブランドの魅力を伝え販売するiroha STOREチームに話を聞きました。来店されたお客様がスタッフと直接コミュニケーションを取れる店舗は、まるで「相談所」のような場。多くの女性と向き合ってきたスタッフチームの言葉からは、まっすぐに一人ひとりの悩みに寄り添う「iroha」の姿勢が見えてきました。
2019年入社のiroha STORE店長。常設店立ち上げの準備段階から参加。本社と連携をとりながらマネジメントを行っている。
山元
2019年入社のiroha STORE副店長。スタッフとコミュニケーションを取りながら、気持ちに寄り添える接客を日々目指している。
Index
オープンから9か月。iroha STOREスタッフに寄せられる女性のリアルな悩み
――大丸梅田店では常設店の開店前にポップアップストアを出店されていました。そのときと比べてお客さんに変化はありますか?
呉田:ポップアップのときは、「なんだろう?」とふらっと立ち寄る方が多かったように思います。常設店をオープンしてからしばらくは、ポップアップで知った方やメディアを見て来た方が大半でしたが、最近はウェブで欲しいアイテムを調べて、お店に来て実物の大きさや感触を確かめてから購入する方もいらっしゃいますね。
山元:「友達が良かったと言っていたので来ました」という口コミでいらしたり、「プレゼントでもらったから人にもあげたい」と、実体験を踏まえて足を運んでくださったりするお客様も増えたと感じます。なかには60代、70代の方もいて、人間の性に対する興味は何歳になっても続くことを実感しています。
――女性のお客様からは性に関して相談を受けることもあるそうですね。どのような内容が多いですか?
呉田:40代以上の方の場合は「夫婦間のセックスレス」、18歳から20代の方は「パートナーの性器が痛くて入らない」といった悩みが多いですね。
山元:60・70代の方も性の悩みを持っていて、なかには「夫と行為ができなくなったので、アイテムを買って一緒に楽しみたい」というご要望でお越しいただくこともあります。
――肉体面だけでなく、精神面でも悩みを抱えている人はいそうです。
山元:相手を気遣いすぎて、挿入がうまくできないことに罪悪感を抱いている女性が多いです。「辛いけど相手には言えない」「どうやって改善したらいいかわからない」と店頭で涙ながらに相談されるお客様もいらっしゃいます。潤滑ジェルの使用を相手に提案するのも、「失礼かもしれない」と思ってしまう。セックスで生まれる緊張感は、自分の痛みを大切にできないことで生まれるものなのかもしれません。
――そういった悩みを誰にも相談できないことが辛いですよね。
呉田:たしかに、当店には「セックスが辛いのは自分だけかも?」「セックスで感じることのできない自分にはなにか問題があるのかも?」といった悩みを1人で抱え込んでいる方も少なくないです。勇気を出して来店されたお客様に対して、「全然不自然なことじゃないんですよ」「私たちも同じですよ」と、悩みに寄り添って伝えることを心がけています。
山元:「肯定された」という安心感を得ていただきたいです。性に対して悩むことは変なことじゃないし、自分がおかしいわけじゃない。そういった小さな会話をとおして、お客様が「自分1人で悩む以外にも、パートナーと話し合って解決していく方法もあるんだ」と、新たな選択肢に気づける場所を目指しています。
「性の相談所」であるために。心を開く場づくりを大切にする
――実際に店舗へ行くと、外から見えにくい奥まった空間で、安心してアイテムを選べる雰囲気でした。
呉田:当店は、セルフプレジャーアイテムを買える場所であると同時に、「性の相談所」でもありたいと考えています。だからこそ、身近な人には言えない悩みを話して、次にどのようなアクションを起こすかを一緒に考えられるような空間づくりを意識しました。
――相談相手として心がけていることは?
山元:お客様の年齢層が幅広いぶん、性の悩みも多様で、私の経験だけではお答えしきれないことも多々あります。なので日頃から、スタッフ同士で知識や体験を共有するようにしているんです。実体験として語れなくても、感覚は共有できるもの。スタッフの年齢層も幅があるので、出産経験がある人や、パートナー間のトラブルを乗り越えた人の話などを聞いて、自分のものにしています。どんな方のお悩みにも寄り添い、思いを共有できるスタッフになりたいです。
――スタッフ同士で意見や情報を交換するなかで、発見はありましたか?
呉田:性に対するスタンスや、すこし哲学的な話ですが「どんなときに愛を感じるか」なども、ほんとうに人によってさまざまなんだなと感じます。いろいろな意見や価値観を聞くことで、「そういう考えの人もいる」と、否定せずに肯定から入れるようになりましたね。
山元:何に対して愛を感じるのかは100人いれば100通りある。だから、共感できる点とできない点を認識したうえで、お互いに尊重することが大事ですよね。お客様も、自分と同じ思いを持っているとは限りません。価値観を統一するのではなく「違って当たり前」という前提で、すべての女性が心地良く生きられる世界を目指したいです。
――ストアでは、自社アイテムのほかに、貸出可能なセレクト本を置いているのが印象的でした。
呉田:「多方面から自分と向き合ってほしい」という意図があるため、本のテーマは幅広く取りそろえています。40冊から50冊ほどあり、すべてirohaコンセプターの渡辺が選びました。みなさん、その場で手にとって読んでいらっしゃいますね。
山元:貸出利用されるお客様も、思っていたよりいらっしゃる印象です。性に関する本だけでなく、女性の生き方、考え方、悩みの本、春画のアートブックも人気です。雑誌などで「膣トレ」や「デリケートゾーン」などのワードを見て意識するようになったから知識を深めたいという方もいますし、「面白い」と好奇心を持って借りていき、リピートされる方もいます。iroha STOREのセレクト本をきっかけに、新しい考え方や価値観に触れてくださったらいいなと思っているんです。
「iroha」が化粧品のように当たり前の存在になりつつある
――リピーターの方は、どのようにiroha STOREを利用しているのでしょうか?
山元:デリケートゾーンのセルフケアライン「iroha INTIMATE CARE」を愛用の方は、消耗品なので高い頻度で来店していただいています。
山元:セルフプレジャーアイテムは、長く使用できるものなので頻繁なリピートはないと予想していたのですが、実際はスタンプカードが溜まりそうなほどリピートしてくださるお客様もいらっしゃって。「iroha」のアイテムはそんなに安いものではないのですが、「使って良かったから、次はこの形にしてみます」と形違いのものを購入してくださる方も多いんです。アイテムはオンラインでも買えますが、ストアに足を運んで買い物してくださることが嬉しいですね。
――「iroha」のアイテムが、女性にとって身近なものになりつつあるのだと感じますね。
山元:少しずつではありますが、化粧品のように、女性にとって当たり前の存在になってきたのかもしれません。それに、購入の傾向でいうと、セルフケアとセルフプレジャーのアイテムをセットで買われる方が多いです。デリケートゾーンのケアに興味がある方はセルフプレジャーにも興味があるし、セルフプレジャーをされている方はデリケートゾーンを丁寧にケアしたいという意識もある。双方向で繋がっていて、どちらも「ケアの一環」という感覚が広がってきているのだと思います。
大切なのは、恥ずかしさや申し訳なさから抜け出すこと
――お二人は、女性が性を楽しみさらに気持ち良く生きていくために、どのようなことが必要だと思いますか?
山元:パートナーでも、友達でもいいから、誰かと性について話せることが大事だと思っています。共有できる相手が1人でもいると、悩みを抱え込んだり、生きづらさを感じたりすることが減っていくはずです。「iroha」のスタッフとして店頭に立つうえでも、「性について話すことは恥ずかしいことではない」と伝えていきたいですし、私自身も性に対してオープンなほう。友達や親子など、お互いにオープンな姿勢でストアにいらっしゃる光景を見ると嬉しいですね。
ただ、友達同士で来ていても、1人が「そんなに買うの?」と否定的に言ってしまうと、買いたいと思っているのに買えなくなってしまうこともある。価値観はそれぞれだと思いつつも、相手を否定する意識は変えていけたらと思います。
呉田:私は、女性がもっと心地いいことを能動的に求めていけるようになることが大切なんじゃないかなと。お客様のなかには、「セックスがうまくできなくてパートナーに申し訳ない」という気持ちからセルフプレジャーアイテムを選ぶ方もいるのですが、まずは自分のためにアイテムを使ってほしいです。決して申し訳ないことではありませんから。特に異性に対して性的な感情を抱くヘテロセクシャルの場合、どうしても男性が優位になってしまいがち。性は男性だけのものではないということを伝えつつ、そっと女性を後押ししたいと思っています。
山元:また、セックスにおいて女性が心地良さを感じられない原因のひとつに、相手とのコミュニケーション不足があると思います。長く一緒にいるのなら一層大事になってきますよね。私自身は、1人の人と関係を深めていきたいという価値観があるので、パートナーとの性関係が50、60、70歳とあり続けるお客様に接すると、いいなと思います。夫婦でお店に来られて、男性が「好きなもの、選んでいいよ」と言っている光景を見ると、微笑ましいですね。お互いを大切にする関係づくりも必要だと思うので、iroha STOREとしてもお手伝いをしていきたいです。
自分の好きを自由に伝えられる世界へ。「iroha」で実現したいこと
――「セルフプレジャー」というワードは、認知されてきたと思いますか?
呉田:正直、まだまだ浸透していないと感じますね。店頭の商品説明カードに書かれた「セルフプレジャーアイテムです」ということばを見て「へ〜、セルフプレジャーって言うんや」とか「これ、どういうこと?」と、初めて知る方がほとんど。「性は恥ずかしいもの」という風潮があるせいで、笑って茶化す人もいます。真面目に性と向き合うお店だと伝え続ける努力が必要だと感じますね。
――では最後に、お二人が「iroha」を通じて実現したいことを教えてください。
呉田:私自身が、誰かを好きになるときに相手の性別を条件としないパンセクシャルということもあり、入社するときに会社の「愛と自由とTENGA」というキャッチコピーがすごく刺さったんです。恋愛というと、一般的に男女の話になってしまうんですけど、それだけじゃない。このキャッチコピーは、多様なセクシャリティーを持った人たちが、自由に愛していけるということを謳っています。ヘテロセクシャルの世界でまとめない会社の価値観が、「iroha」にも受け継がれている。だからこそ、もっと個々人のセクシャリティーが認められ、恥ずかしがらずに性の話ができる世界にしていけたらと思います。
山元:自分にとっての愛や「好き」という感情を自由に伝えられるようになるといいですね。例えば、性のことも「恥ずかしいことじゃない」と思えたら、いまよりもっと心地良く過ごせると思うんです。社会の空気や風潮で、言いたいことが言えないのは辛いですから。まだ難しさを感じますが、「iroha」を通して少しずつ社会を変えていきたいです。
iroha STOREスタッフのインタビュー、いかがでしたでしょうか? ユーザーと一番近い距離にいるからこそ、女性たちの悩みを肌で感じながら働くことができています。「iroha」はこれからも女性たちに寄り添うブランドであり続けます。